ainobeat

主に記録用

意外と深かったウーマン・オブ・ザ・イヤー

自担の肩書きに「女優」が増えました。

 

 

 公演が始まる前は「女として舞台に立つ早霧さんは楽しみだけどキスシーンに耐えられる自信がない><」とか言ってたのに今は心がめちゃめちゃロマンティック浮かれモード。キスもハグも愛の告白も全部が可愛らしくてピュアで愛おしい。そんなお芝居を早霧さんがしてたんだよ!!!!!!あの早霧さんが!!!!!!!!!

 だけど“華麗に転身”という感じではなく声のトーンもドヤ顔の圧も男役の頃とあまり変わってないし芯の強さや夫婦喧嘩の迫力なんかはむしろ男役時代の経験を存分に生かしてて、とにかく最初から最後まで早霧さんなの。無理も背伸びもしてない早霧さんのお芝居なの。これ不思議だったな~。もはや性別云々の前に人間としてお芝居してるのかしら。

 

 もちろん見た目はオシャレなスーツを着こなすカッコイイ女性だったよ!放送業界、それも報道の世界でバリバリ仕事をしているキャラクターだから衣装は基本スーツだけど初演の時代のデザインでとっても可愛いし、色が白、黒、グレーの3色でも早霧さんのキラキラオーラで十分輝いてた♡ひたすら眼福♡♡♡あと退団して10ヶ月が経ったら腕や足の細さやデコルテの美しさにも目が慣れたのか、ノースリやスカートにあまり驚かなくなってる自分がいた。こうやって本人と周りの感覚も少しずつ変わっていくんだろうね。

 ちなみに一番好きだった衣装は最後の白のブラウスとタイトスカートに黒のベルトでアクセントをつけてたスタイル。腰が細いからタイトスカートがよく似合うんだけど、それより何より白が似合う!!!!!色白が引き立ってて究極のブルべ美女を見た。もう全編ありがたかったよ~。素敵な衣装を用意してくれた衣装さんありがとうございました。

 

そろそろ本編の話をしたいんだけど、その前に一つ言いたい。

これこんなドタバタコメディだったの?!?!

随分ポスターの雰囲気と違うね?!?!初日観てビックリしたよ?!?!またしても顔面を最大限活用した知性溢れるクールビューティーな早霧さんだったから、てっきり真面目なお仕事ドラマかと思ってた。まさかあんなに大笑いする内容だなんて絶対思わないじゃん…。公式も「ラブロマンス」じゃなくて「ラブコメディ」って言ってくれればもっと気軽にお友だち誘ったのに。勿体ないなぁ~。

 

 ストーリーは女性の仕事と結婚をテーマにしてるけど初演当時の考え方だから今の感覚で見るとちょっと古いのね。でも思わず自分の生き方を振り返っちゃうような身近さがあったな。まぁ自分がそういう年代に差し掛かってるっていうのもあるんだけど。だから古臭いとも窮屈とも思わなかったけど、私はテスみたいに仕事第一に生きてないしこの先も一生そんなこと思わないから彼女にとっての仕事を自分にとってのオタク活動に置き換えて見てた。そしたらめちゃくちゃ心に刺さった…(笑)

 

 今回の作品、男役から女優になろうとしてる早霧さんだからヒロインのテスにハマってる部分がかなりあって、特に『女だけど男』という曲でテスがサムの漫画家仲間たちと打ち解けて「女でも男なの」って女だけど男性社会で逞しく生きてきた術を明るく楽しくハッピーにみんなで歌って踊るんだけど、退団したての元男役が歌うと違う意味の曲になるの。それがあまりに秀逸だったから、早霧さんの退団後初主演にこの作品を持ってきたのはこれが狙いだったのかな?って思った(笑)

 その一方できちんと役柄のテスとしての切なさも含んでいて、最後は「忘れないでいてほしいの、わたし女よ!」というテスの力強い叫びからの「だけど仲間なのは男」で締めくくられて結局女性の部分は封印してしまう。今は女性が働くことが普通な世の中で、「私は男だ」なんて暗示をかけなくても女性であることを楽しみながら仕事ができる時代。でもテスが生きている時代ではまだそれらを簡単には両立できないんだよね。だからサムとの結婚生活も上手くいかなくなっちゃう。(これに関しては原因は他にもあるけど(笑))だから可哀想なのか何なのか分からないけど、ここがやけに印象に残ったなぁ。

 

 テスとサムの恋の落ち方はベッタベタな一目惚れでプロポーズも勢いで、そのまますぐに結婚しちゃったもんだから当然すれ違いが生じてあの恐怖の生クッキングショーに繋がってしまうんだけど(笑)、正直テスの言動には思い当たる節があった。(実は半年前彼にフラれた人)(そのメンタルでこの公演期間を乗り切った私を褒めてほしい)

 テスはサムがミルウォーキーから帰ってくるまで大好きなサムと一緒にいて仕事も順調で幸せだと思ってた。でも所詮それはテスの世界の中でのことでしかなくて、サムの話は聞かないしサムの人生のことなんて恐らく全く考えてない。もしかしたら「私が幸せならサムも幸せ」くらいに考えてたんじゃないかな。だからテス的には寝耳に水。だけど大前提でサムのことは愛してるからサムが出て行ってもどうにかやり直したくて奮闘する。(ここまでの流れで「あれ、これ私のこと?」って思った…(笑))こういう原因のすれ違いだから最後のサムの「ほんの少しだけ僕の居場所を残しておいてほしい」って答えに繋がって話の展開としては一貫してた。ただこのテスの復縁作戦が荒技すぎてかなりコメディに脚色されてるから、もしこれがシリアスなお芝居だったらどんな選択をしたのかなってちょっと気になる。あと早霧さん自身はどう思ってるのかも。

 

 私はこの作品から“女性だから〇〇すべき”なんて押しつけがましいメッセージは感じなかったけど、家庭(旦那)を顧みなかったテスがアレクセイの生き方に触発されて自分の生き方が間違ってたと思い至り、元ダンナ夫婦の自分とは正反対な結婚生活に憧れを抱く。その気持ちは痛いほどよく分かった。私は普通にジャンみたいな生き方も女性の幸せの一つだと思ってるタイプで、でも今それを言うのは「私は古い考えの人間です」って言ってるみたいで恥ずかしかったりするんだよね…。都会と田舎じゃ価値観が違うんだよ…。

 この作品に伝えたい結婚のメッセージがあるとすれば、幸せな結婚の形は夫婦の数だけあっていいんだからテスとサムの出した結論が模範解答というわけではないだと思う。大事なのは幸せになろうとお互いが努力することで、それは結婚だけじゃなくて人とのコミュニケーションの基本にも当てはまること。男女問わず人付き合いが苦手な私はかなり勇気をもらったな。

 あと去年のゼクシィのCMで言っていた「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私はあなたと結婚したいのです」というフレーズが頭に浮かんだ。多分テスにとってのサムの存在や結婚に対する憧れはこれだよね。一人でも問題なく生きていけるけどサムだから結婚したいってやつ。そこが可愛いの!実際、対立した出会いからプロポーズまでの1幕と結婚後の2幕では早霧さんのお芝居が変わってたしね。そこの演じ分けはお見事でした。

 

 感想の濃さ(本人比)から分かるように思いのほか心をえぐられる内容だった。アドリブ盛り沢山のラブコメディで大笑いしながらも、一方では笑えないところとかもあってとにかく心に残る早霧さんの女優デビュー作になった。トップ時代は理想の男性像とか弱きを助けるヒーローみたいな役が回ってくるけど、外に出たらテスみたいに明らかに自分に非がある役も演じるんだなってまたひとつ経験になったよ。

 私は早霧さんの体温が伝わるお芝居が大好きなんだけど、それが女性役になると更に強烈になることも分かった。喜びも悲しみも痛みもリアルすぎて笑えないの(笑)(と言って笑う(笑))だから今後が凄く楽しみになった!まだ女性として女性を演じるのは大変だと思うけど、早霧さんが演じる女性の役と、女性の役を演じる早霧さんにこれからたくさん会いたい!!!

 

女優デビューおめでとうございました!!!!!!!