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主に記録用

虹のプレリュード 10/4

天王洲銀河劇場  11:30開場/12:00開演

 

 

初めて生で見る生田さんはお人形さんみたいに可愛くて凛としていて優雅で本当にお姫様みたいだった。そして初めて生で聴く生田さんの歌声は伸びやかで透き通ってて心地がよかった。実はこれを期に「生田さん」から「いくちゃん」呼びに変えようかと思ってたけど「いくちゃん」なんて軽々しく呼べないくらいとにかく凄かった。普通に舞台女優さんだった。初めての主演ってことでどこかしら未完な部分があるだろうと粗探しの気持ちを少しでも持っていた自分を恥じたよ。そんなもの生田さんには無かった。舞台俳優さんたちの中でも堂々としていて、この子本当にアイドルなの?と問いたくなるくらい圧倒的な存在感とオーラがあった。あんなに音楽劇の才能を持ってる子がアイドルとして存在する乃木坂ってグループとして相当強いし、生田さん自身もアイドル界で新しいジャンルを開拓できるかもしれない。

 

ここから本編の感想。(ちょっと断片的)※ネタバレあり

まず原作の漫画も当時の時代背景も全く知らないまま観劇したから序盤はなかなか世界観が掴めなくてふわふわしたまま観てしまって後悔。現代の少女がコンクールで弾くピアノのメロディがBGMとなって本編が始まる構成から、この作品が明るく楽しいものじゃないというのは察しがついた。よく戦争ものの映画やドラマでよくあるパターンだから。現代の少女は本編のルネ、ルイズとは違って気弱で消極的な印象を受けたけどそれが対比として演出されたものなのかハッキリとは分からなかった。

でもそのルネ(男)とルイズ(女)の違いはハッキリと描かれていた。男らしさを出すのには限界があるから女らしさを過剰な程に出していたけど、時代的にも役の育ち的にもそれが自然で特に違和感はなかった。それでいてルネが時々会話の中で女性らしい言い回しをしていたのも少女が少年に変装しているのが背景にあるということを忘れさせなくてよかった。

 

対比といえばもう一つ、コンスタンツィアとルイズの女性の立場での違いもあった。コンスタンツィアは母国を捨ててでも音楽を続けることを選んだのに対して、ルイズは兄の夢を叶えるために女であることを隠して(捨てて)音楽を続けたけど、ヨーゼフに出会ってからはその音楽を諦めてヨーゼフと国に残ることを選んだ。こうなると、兄の夢のために女であるという本当の自分は捨てれたのにヨーゼフへの想いは捨てられなくて本当の自分が先行してしまった。そうさせたのは他でもないヨーゼフだからそんなルイズの中のヨーゼフの存在の大きさにグッとくる。しかしこの女性二人を比べたときに、自分の信念を曲げずに生き続けるコンスタンツィアと好きになった男を信じて命を落とすルイズ、という点で正反対な生き方が描かれてる。主人公がルイズだからコンスタンツィアが性格悪いみたいに思われてしまうかもしれないけど、現代ではコンスタンツィアみたいな芯の強い女性が活躍する時代だからどちらも間違った選択なんてしてなくて、悲しい結末だったけどどちらも悔いはないんだろうなと思う。

 

ルイズがヨーゼフに感化されて愛国心が芽生えていく様子が時の経過と共に如実になっていったけど、これって無意識ではあるけど要は洗脳だよね?卒業試験でルネがいきなりポーランド国家を弾き始めたときちょっと怖かった。多分音楽院にやって来た頃のルネなら国が他国に侵略されることに反感はあるものの、そこまで敏感にはならないしそれを表に出さなかったと思う。なのに見つかったら殺される可能性だってあるなかで「今こそ!」ってまるでそれが正義みたいに高らかにピアノを弾き奏でていてその変貌ぶりが怖かった。でも大好きな兄の夢を叶えるために兄に成り代わって音楽院に行くことを決めたくらいだから、もともと大胆で思い切りのいい性格だったのかもしれない。

 

音楽院でのシーンは何かに守られてるような安心感が見ていて伝わってきたんだけど、特にフレデリックとのシーンはそれが特に強かった。国の存亡がかかった激動の時代を生きているのに、そんなことを感じさせないくらい純粋な気持ちで音楽を愛しているのが凄く綺麗に丁寧に表現されていてよかった。ルネへの想いは友情だと思っていながらもそうではないことにピアノを通じて気づいてしまうところもフレデリックらしくて愛しい。あとストーリーの最初から最後まで高貴で美しい存在として描かれていたのもよかった。あんな時代じゃなければ卒業後はルイズとして生きてフレデリックと一緒にピアノを続けていたんだろうと思うと悲しさが倍増する。フレデリックとのシーンは本当に美しかったから。この物語の華は間違いなくフレデリックだと思う。

 

ロシア軍のイワノフとの関係は恐ろしく急展開だったから正直ついていけなかった。何回かあるルイズと会うシーンのうち2回目ではもう好意的なそぶりだったからあれは一目惚れってことなんだろうけど、支配下に置こうとしている敵国の少女に軍人のしかも役職についてるような人がそんなに簡単に落ちるかなって。そこだけがどうにもこうにも理解できなかった。アプローチの仕方は嫌いじゃないけど。ってこれは超個人的な感想。悲しい結末を迎えるキッカケがここの関係を利用したものだったのもなんだか不服。最後が国に対する愛じゃなくてルイズもヨーゼフもそれぞれへの愛が引き起こした悲劇だったから余計に。でもアプローチの仕方は嫌いじゃない。(2回目)

 

 

それぞれ主要キャラクターと絡めた感想はこんな感じ。総括として、生田さんの歌唱、演技、ピアノ演奏、ダンス、所作のすべてが美しく完璧だったということと、それぞれのキャラクターに筋の通った信念があってそれが重厚感ある悲劇の中で光っていて観客に強く訴えるものがあったということ。作品もいいものだったし演者さんたちも素晴らしかった。あとは観る側のマナーと知識が伴っていれば清々しく気持ちがいいものだったと思う。(曲終わりの拍手と観劇時の姿勢に関して)